. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 第5回 北京-東京フォーラム 分科会 政治対話11月2日速報記事(後半)

政治対話 速報記事(後半)①

渡部恒三氏:

 私は早稲田大学を出ましたが、会社の就職試験には合格できないが、投票してもらえればいいということで、26歳で国会議員に初当選しました。当時の日本の政治は、佐藤栄作が総理大臣、福田赳夫が外務大臣でした。佐藤の後は福田か田中か、ということでした。そして、日本にとってもっとも重要な外交課題は中国でした。当時、日中の間に正常な国交関係はありませんでした。貿易もできないのです。中国と日本が正常な国交を持つことが、日本はもちろん、中国のためにも、世界のためにも大事だと国会で訴えてきました。当時の通産大臣の田中さんが私をかわいがってくれて、彼の命令で私は1972年に北京に参りました。当時は香港にまずは止まり、重い荷物を持って橋を渡るという大変な旅でした。そして北京に参りまして、周恩来首相にお目にかかりました。  当時の日本は中華民国と正式の国交をもっていました。今から考えると夢のようですが、日本の役人は4人、それだけが日中のパイプだったのです。北京の街も自転車だけで、私が車に乗って行くと、中国人がみんな集まってきて、私じゃなくて車をみているような、そんな時代でした。

 わたしは、やはり中国の皆さんとともに世界を進めなければいけないと思って周恩来首相にお会いしました。そこで、「中国を代表するのは中華人民共和国である」と申し上げました。次の総理大臣となる田中がそれを認め、しっかりと手を握りましょうと申し上げました。これが私の政治生活の中で、一番自慢できる、感激する時間でありました。その後は皆さんご存じのように、周恩来と田中角栄はがっちりと手を結びまして、今日の日本になりました。
 いろいろなことがありましたが、餃子の問題でお互いにけしからんと議論をしても、結局は、日本のため、中国のため、世界のために、やはり中国と日本はしっかりと手を携えていかねばならないと確信しています。
 もうひとつ、中曽根政権の厚生大臣のときに中国に来ました。あの思い出したくもない戦争のとき、東北地方にソ連が攻めてきて、かわいい子供たちを残したまま日本人が帰るという非常に悲しいことがありました。
 しかし、ここから、日本人が忘れてはならないのは、その日本人が残した子供たちを、中国の、みなさまの祖父母の皆さんが、温かく育ててくれたことです。世界の歴史でこんなことはありません。私はあのときハルビンに行って、厚生大臣として、日本人の子供たちを育ててくれてありがとうという感謝の会を開かせていただきました。
これから経済問題、安全保障問題でぎくしゃくすることはあるでしょう。しかし、必ず最後には日中の国民の心は一つになる。そのとき、東アジアが結束して、日本と中国が結束して世界のために頑張るということをお話しして、私の話とさせていただきます。ありがとうございました。

呉建民氏:

 渡部先生の話は非常に示唆に富んでいます。田中総理がなくなった今、正常化の場に立ち会った人は非常に少ない。そこには、世界のトレンドを見る人、歴史の先頭を走る人がいました。1972年に中日は国交正常化しましたが、これはもっとも楽観的な人でもこのような中日関係の発展は予想していませんでした。中日の貿易は2000億ドルを超えています。
今日の2つのテーマは、世界の判断から切り離せないものです。今日の日中関係は世界の中において考えるべきであります。私は半世紀近く、国際社会を観察してきました。今日の変化はかつてないものです。昨今の世界の大局は2点です。
 ひとつは、時代の変化。戦争、革命から、開発と発展というものになりました。これは非常に大きな変化です。なぜなら、戦争と革命の時代には、変えられないものが多かった。中国は努力したが、西側に学ぼうとしたら裏切られてしまった。戦争と革命から開発と発展へは、非常に大きな変化です。21世紀は、戦争では解決できません。イラク戦争は何も解決できませんでした。
もう一つの変化は、国際関係の重心が西洋から太平洋に移っている。これは400年来の変化です。西洋は世界の先頭を走ってきましたが、この状況はいまや変化し、太平洋に重心が映っています。
 アジアの台頭は日本から始まりました。日本は輸出志向型というモデルを開発しました。これはアジアに合致するもので、次に東南アジアと中国が立ち上がりました。日本が先頭を走り、ドラゴンが追い、東南アジアが追い、中国は1970年代に仲間入りしました。そして21世紀の様相を一変させるでしょう。ですから、今日の日中関係は単なる二国間関係ではありえません。
相互依存にあり、アジアが世界平和に向かうために、世界の面目を一変させるためには日中の協力が必要です。しかし中国の世紀には賛成できない。松本先生のアジアの世紀にも賛成できない。欧州の19世紀は多くの人を傷つけ、アメリカの世紀もそうでした。アジアは立ち上がっていますが、平和発展を目指しています。21世紀は平和発展全人類の世紀でなければいけません。アジアの世紀ではあらぬ疑いを受けます。ナショナリズムと人類への思いを皆さんには持ってほしいです。

松本健一氏:

 先ほどの話で文明が西から東に移ってきているといわれています。日本は1964年の東京オリンピックをきっかけに経済成長の時代を迎え、昨年は中国がオリンピックを迎え、日本の経済発展をモデルにアジアの4龍といわれる、韓国、香港、などが発展してきています。
 1980年にはアジアの4龍が発展しました。鳩山首相が言われたことは、昨年のフォーラムで言っていたことと同じで、学生から多くの反響を受けました。それでは、続いて中谷先生からお願いします。

中谷元氏:

 アジアの国々の連携が完成すれば、世界で最も安定した地域になると思います。日本と中国はもっと足並みをそろえて仲良くなってほしいと、東南アジアの各首相から言われたことがあります。
 私はこのことから、日中の関係は東アジア全体、世界全体の発展につながると痛切に感じております。今後は共同体といわれるように、ヨーロッパ共同体のような素晴らしいアイデアを制度としてつくっていきたいと思っております。
アジアには独特の文化があります。漢字、仏教、儒教、礼儀作法、など世界の中でもすぐれた文化があるので、それぞれで発展してもいいといわれますが、経済の発展の中ではそうはいえません。アジア共同体のために、北朝鮮に対して、日本からも、中国、特に東北地区である大連からもアジアの平和共存のために努力していきたいと考えております。

松本氏:

 アジア共同体は夢のような話ですが、一つ一つ話を進めながら、将来的にはその理念を共有できるようにしたい。1820年は日中の平和時代で、二国で世界の40%のGDPを占めていた。そういう点から、現実的に一歩一歩アジア共同体を完成していきたいと、中谷先生の話から思いました。


政治対話(後半)②

陳健氏:

 1998年から2001年にかけて3年間、私は日本大使を務めました。また日中関係を語れることを幸いに思います。先程の呉先生の話のように、世界のトレンドは非常に重要です。世界の大国としての相互信頼と協力ができることが必要です。
 私は問題点を申し上げたい。日本で体験したことは、歴史問題や靖国参拝は日中関係に大きな障害となったということです。今年の世論調査を見ても、印象の悪い理由として48%が、日本の政治家が両国関係を傷つけることを挙げ、そして50%が靖国参拝を挙げている。逆に日本人は、印象の悪い理由として、「中国が日本の歴史問題を非難するから」を挙げています。歴史問題は重要なもので、最終的な政治的合意は大事ですが、長い目で見ればこういう草の根の感情も大事です。鳩山首相は靖国に行かないと、初めて明言した首相ではないでしょうか。日本国内からも、正しくないというリアクションはなかったと思います。
 日中関係がこのような障害を乗り越えられるのであれば、次のステップはその国との関係です。中日両国が、互いの利害に配慮する。こうした配慮は中ロ関係、中米関係の政治関係の改善に役に立ったのです。日中は相手のコアな利益に配慮すべきです。

 中国の立場は、中国の統一が日本に脅威とならないということ、それは地域に平和と繁栄をもたらすということです。日本の利益のナンバーワンは、おそらく、すでに経済大国なので、政治的に大きな役割を果たすことです。国連安保理入りも目指しています。もし十分な信頼関係ができれば、話し合いののち、配慮したうえで支援することができれば政治的な信頼醸成もできると思います。
 しかしメディアのインタビューでは、中国の軍事力増強について心配をされます。欧米も同じです。しかし心配しないでください。軍事力の強い国ははっきりと示し、弱い国は曖昧にする。どちらがいいのか、何をもって透明なのかということが問題であるというのなら、今回のパレードですべてを明らかにしました。誰かを傷つける気はありません。
 近代化の目標も注目されていますが、国の領土、主権統一、国の平和を守り、エネルギーの輸送路の安全の確保も必要です。それが他国の脅威になるでしょうか。日本もシーレーンの安全を確保しなくてはいけない。すると中国の軍事力増強は日本にとってチャンスではないでしょうか。軍事力増強について、両国民が心配しています。しかしこの問題は、まさに戦略的な関係をつくるチャンスになると思います。シーレーンの安全でも協力できると思います。
 色々な問題を解決する過程におきまして、苦い経験もあります。日中関係において、歴史問題などは弱まってきておりますが、他の新しい問題が出てくるかもしれません。それを見出すのが今回のフォーラムの目的でもあります。

松本氏:

 日本の今年の政権交代ですが、日本における変化について新聞に書いたことがあります。国内的には国内主導で、国外的には日米を推進することよりは、アジアを中心とした視点が変わってくると書きました。評論家、歴史家としての意見ですが、様々な方面で影響力があると思います。

笹木氏:

 中国に一番最初に来たのは学生のころでした。大連にも訪れました。今振り返って、中国に行く30年ほど前ですが、大学を出たあと、松下政経塾にいました。そこで松下幸之助さんが、21世紀にはアジアの経済発展が最も盛んになるとおっしゃっていました。そして今、まさにその通りになっております。
 そして今後30年の課題として考えられるのは、東アジア共同体を完成することができるかということです。政権交代は、93年にもそのような変化がありましたが、今回が本格的な政権交代となりました。鳩山首相はいま、「人間のための経済」といっていますが、金融の成長は足が速いと言えます。アメリカの金融破たんはそれが招いた結果です。この数字がどれだけ人間の幸福に繋がっていたかという点からも考えなければなりません。
 我々が重視するのは、まずは介護問題です。高齢化が進み、高齢者を見る人材が減っており、それに対する雇用対策が打ち出されました。もうひとつは森林対策です。日本は森林を無視してきたので、災害が多発しました。両方ともこれまで力を入れていませんでしたが、直接我々の生命、安全に関わる問題であり、そこに力を入れて対策を立てております。
 環境問題が今後アジア共同体の発展に大きく関わってきます。環境産業というのは今後は間違いなく重要な役割を果たすようになると思います。いずれにしても、日本の新しい政党が、20年30年をかけて長い目でアジア共同体を完成ていくことでしょう。
 「和解」という言葉は中国の隋の時代から生まれ、聖徳太子も使っておりました。新しい産業とプロジェクトがアジアの中で循環し、相互の利益に繋がる産業に環境産業があると思っています。

松本氏:

 日本には基本的に「革命」という言葉はありません。日本はいま第3の開国の時期にあり、日本のような島国、海に守られている国では、これは「維新」と言われます。これは中国の『史記』の中で使われますが、それ以外では使われていないと私は意識しております。「維新」とは本質を変えないで外側をきれいにするというもので、日本では明治時代に「明治維新」をやり、民主党は平成維新をやろうとしているのです。中国のような易姓革命を起こしたくないから、日本の天皇は姓をもっていない。革命的なことをやっても維新なんです。


政治対話(後半)③

司会:

 次のセッションは学生とパネリストとの議論になります。簡潔に、まとめてゲストに聞いてください。それでは質疑応答の段階に入ります。

学生:

 日中両国には大きな差がありますが、共同体を構築するにはもっと大きな困難が伴うのではないのでしょうか。どこかの国の利害が阻害されるのではないでしょうか。

学生:

 東アジア共同体の構築という夢ですが、そのためには人材が必要になります。中日双方にとって、どのように人材の交流を考えていますか?

欧氏:

 EUにはさまざまな条件がありました。ソ連や冷戦の存在など。このモデルの適用性をどう見るかです。それからEU統合では主権の譲渡がありましたが、それは現実的でしょうか。領土問題も残っています。

笹木氏:

 日中間での様々な摩擦などありますが、フランス・ドイツと比べると、戦争の回数などを考えると、日中の比ではないと思います。しかし、それでもEU共同体は完成しましたから、アジア共同体には共同のテーマ、プロジェクトをまず持たなければいけませんね。まずはシミュレーションなどしなければいけませんが、来年更に具体的に対策が練られるでしょう。人材については、日本では太陽光発電などの技術は飛躍的に伸びていますが、そういったプロジェクトに中国の人が関わっていくことで、その他の国も巻き込んでいくということが重要だと思います。

松本氏:

 尖閣諸島などの問題から、もしかしたら戦争に繋がることもあるかもしれませんが、そういったものの解決のためにアジア共同体があるのだと思います。アジアには神道、仏教、イスラム教、儒教などありますが、宗教戦争というものはアジアではほとんどありません。インドにいけば、イスラム教とヒンドゥー教の建物を同時に見ることができます。日本では金比羅様がいますが、これは元々ヒンドゥーの神様です。これが今では日本の神道となっています。そういったものは東アジアの共通性だろうと思います。イスラム教もマレーシアなどに行けば、原理主義的な考え方とは少し変わりますね。
 こういった文化的な共通性がインド、日本、中国にある。歴史を探ることによって、我々のなかに共通点があるということを考えるべきだと思います。我々には共生する、山の上と下が共生するという文明の理念がアジアにはあるというのが私の説です。

呉氏:

 アジアと欧州の比較について。独仏が1000年にわたって戦争をしました。欧州の歴史をみると、紀元800年ごろには統一していました。独仏の大きな戦争は23回。50年に一度です。独仏が平和に向かったのは、度重なる戦争に伴う、非常に深い憎しみがあったからです。日中についていえば、2000年の友好と50年の対立と言われています。確かに50年は対立しました。しかし、東アジア共同体の成立は十分にありうると思います。
 次に第2点について、東アジア共同体は鳩山首相が言い出したのではなく、ASEAN+3で合意されています。共同体の構築は中日双方の利益であること、そして10+3の首脳がまた、合意したことです。これは歴史の流れにマッチする、必然の成り行きだと申し上げたい。3点目として、着々と少しずつ共通利益を見つけて、それを発展させ最大化する。これが構築のプロセスでしょう。
 付け加えると、構築にはかなりの時間がかかります。第二次大戦の終結間際に、欧州の知識人は高い見地から歴史を先がけて欧州共同体という理念を打ち上げ、徐々に発展させてきました。このプロセスは「棚ぼた」などではなく、まさに人間が創造するものだということです。このフォーラムの意義は何かというと、中日双方の有識者が若者と語り合うということです。若い人たちに、アジア諸国が一緒に発展するにはどうすればいいのかを考えてほしい。アジアが良くなるということが、世界が良くなるということなのです。


政治対話(後半)④

男子学生:

 今年は建国60年ですが、いろいろな議論があります。アメリカに兵器を売るためのショーではないかという極論もありますが、本日のテーマのように、中国の軍事力の透明度のあらわれがあの閲兵式だったのではないか。問題は、この閲兵式を見て喜んでいるのはアメリカのメーカーではないかという話ですね。こういった問題が東アジア共同体にどう影響を与えるのかということです。

女子学生:

 渡部先生に伺いたいのですが、これから経済発展をどうやって図っていくのでしょうか。

男子学生:

 中谷さんにお聞きします。日本の軍事力も拡大していて、防衛の域を超えています。中国の目から見ると日本の軍事力は過剰なのではないでしょうか。

中谷氏:

 日本の防衛政策は専守防衛で、他国を侵略することは認められません。予算から言うと、この10年ずっとマイナスで、皆さんが思っているようなものではありません。一方中国は、10%以上の成長率で非常に心配しています。日本の軍事に関する予算は飛行機のネジ一本まで組み込まれており、厳正、厳格、透明であり、兵器の数などもしっかり報告しております。中国に関しては、そのような細部まで公開されていません。宇宙での新たな技術開発も同じようなことが言えます。そのような中、両国の発展の為に、腹を割って、話し合わなければならないと思います。

渡部氏:

 円高について、日本が戦後経済で国際経済に復帰した際は、1ドル360円でした。現在は1ドル100円以下で、円高というよりは、ドル安が続いているようですね。かつて私が通産大臣としてお話した内容ですが、中国は言うまでもなく社会主義の国でありますが、中国人の賢さは社会主義の中で市場経済・主義を上手に取り入れて、世界を巻き込み発展しているということです。非常に賢い方法だと思います。日本の経済成長の中で国民が平等に生きていくということが鳩山内閣の目標でありますが、日中間でそのような対立が起きることはないと思います。
 アジアの経済の中枢として、これから中国が一番になるでしょう。そのことによって、アジア全体が発展することを願っておりますので、日本側が対立したりするようなことはありません。具体的な問題では、各国間で問題はありますが、その解決の唯一の方法は「心」です。日本の残留孤児を大切に育ててくれた中国人のことを日本人は忘れませんし、中国側も忘れません。そういう意味から、私は永遠に中国と日本の発展を願っております。

呉氏:

 アメリカが日本にプレッシャーをかけ円高になったといっておりましたが、私が新聞で読んだ上では、1985年のニューヨーク・プラザ合意はアメリカのプレッシャーではなく、合意です。当時の宮沢喜一大蔵大臣は、「円高についてはどう思いますか?」という質問に対して「大丈夫」とい言っておられましたので、これは合意です。日本は円高によってコストダウンをし、競争力を高めていきました。
 その後、バブルが崩壊しますが、私の見方ではアメリカ人は日本の円高を要求していますが、長い目で見た場合にはその通貨が必ず高くなります。中国人は自分の必要にあわせて、市場のメカニズムを考慮しながら、対策を練らなければなりません。
第二点目ですが、多くの国が多くのお金を軍事費に費やしています。中国人が一番最初に「核がない世界をつくろう」と提唱しました。国防競争はすべきでしょうが、軍事力競争は絶対にやりません。

松本氏:

 日中の経済問題はたいしたことはないと思います。経済発展については心配しておりませんが、そこでの経済格差、沿岸と内陸の国民所得の差は大きな問題ではないでしょうか。中国の歴代王朝が倒れるときには必ず農村暴動がおこり、新宗教が起こる。ないと言われるかもしれなませんが、中国政府公認のキリスト教徒は3000万人、台湾の学者が言うのには8000万人いると言われています。地下教会ですね。昼ではなく夜に行って、食糧や薬をわけている。信じられないかもしれませんが、経済成長の結果としての貧困層がキリスト教に帰依すると、農民暴動に帰着するということを話しておきたいと思います。

陳氏:

 軍備競争がソ連を崩壊させました。中日双方の軍事力強化の際、不信感をよばないように協力することが大事です。長いシーレーンをともに確保できれば、双方の猜疑心を相殺し相互信頼につなげることができれば、互恵関係が生まれます。

趙氏:

 ネットの情報はまず、あまり信用してはなりません。中国の軍事の透明度が足りないと言われますが、中国には29の隣国があり、アメリカは2つです。しかし国境の問題はそこまでに脅威ではありません。なぜなら日本と中国は永遠に戦わないということになっていますので。


政治対話(後半)⑤

学生:

 日本の対中政策について困惑しています。中谷先生に伺いたいのですが、政権交代によって、日本は戦略的なチャンスを逸し、朝令暮改によって信頼を喪失しているのではないでしょうか。

学生:

 アメリカの影響をどのように排除するのでしょうか。

学生:

 中国の歴史教育では、非常に生々しい描写もあります。歴史問題も大事だが、未来のほうがもっと大事です。中国政府はもう少しこれを改善できないのでしょうか。

学生:

 笹木先生に伺いたいです。もし先生が防衛大臣だったらどうしますか。民主党は「対等な日米同盟」と言っていますが、対等とは何なのでしょうか。憲法第9条をあらためて相互防衛、軍事同盟に変わるということでしょうか。それとも他のやり方で対等になるということでしょうか。さらに、もし日本がアメリカの対等なパートナーとなったら、どうやって日本の国を守るのですか。外交でしょうか。それとも他の手段ですか?

笹木氏:

 政権が代わって、日中間の友好関係の積み重ねがなくなるのではないかという質問でしたが、安心してほしいと思います。誰もが、日中関係を自民党時代よりもさらに強くしなければいけないと考えています。さらに前に進むと期待してほしい。アメリカとの関係についてですが、民主党はイラク戦争に反対し、撤退の提案もしてきました。しかし、日本には自ら情報を得るという点が足りない。アメリカに対して、必要以上に依存してきたのです。情報力については自衛のためにもアップしないといけないと考えます。
 北朝鮮についてですが、その脅威を小さくできれば、日本の軍事力を小さくすることはできるかもしれないと思います。しかし現実には、自衛力を自前で持つということは当然考えなくてはいけないと思っています。

呉氏:

 ネット上の意見、新聞の意見などは多様化しています。ですから、その変化という大きなトレンドです。多元化すれば政治性がなくなるというロジックには問題があります。鄧小平氏から胡錦濤氏まで、いろいろな摩擦がありました。しかし鄧小平氏は、共同利益のほうがより大きいという態度をとり、中日関係を発展させました。
 アメリカについてですが、私はいつも、開放的な地域主義について話すことにしています。アジアは世界を、世界はアジアを必要としています。開放した地域主義は必要です。EUの加盟国は6、9、14、24カ国と増加しました。アメリカによる影響の単純な排除ということであれば考え直さなくてはいけない。排除は非現実的です。関係をうまく処理しなくてはいけません。それは排他的な共同体ではないのです。排他的な見方で世界を見てはいけません。

欧氏:

 今回の衆議院選挙の前に、世襲議員は自民党の40%を占めていました。もうひとつ、日本は終身雇用制をとっていましたが、いまは40%が非正規雇用です。財閥を通じた支配が利かなくなり、伝統的な支持者がいなくなったわけですね。

司会:

 時間が迫ってきました。一人一言でお願いします。

学生:

 将来、中国と日本が直面すると思われる問題は何でしょうか。それから、歴史問題以外の不利な問題は?

学生:

 日中関係について、鳩山政権にはどのような積極的な意義があると思いますか?

学生:

 共同の船舶護衛について、その困難さはどこにあるのでしょうか?

学生:

 日本のイノベーションなどについて、企業個人がどのようにイノベーションをするよう奨励されているのですか。

欧氏:

 在日外国人に参政権を与えるかどうかという点についてはいかがですか。

渡部氏:

 国政は無理です。しかし地方に長く住む人について、地方参政権を与えるべきではないかという話はあります。
 それから安全保障ですが、「アメリカから派遣の要請があったら断われ」と小泉純一郎元首相にずっと言っていたのですが、どのような事態になろうとも、日本と中国が世界のために尽くすということを考えていれば、世界は発展します。

中谷氏:

 ソマリア沖については警察行動であり、集団的自衛権の範囲内です。中国も認めています。
 それから日本の政策には3つの柱、「国連重視」、「日米同盟」、「アジア重視」がありますが、これは力のバランスを考えたもので、崩すべきではありません。しかし国連が現実に機能しないなら、現実的な対応を取らないといけない。日米同盟については慎重な対応を政府にお願いしたいと思います。
 それから今回の選挙結果は、自民党への「不満」、民主党への「不安」の表れということでしたが、次の選挙の我々のスローガンは「政権交代」ということで、頑張っていきます。

笹木氏:

 これから日本の新政権では、東アジア中心で新しい政策が出てきます。このような活動に参加することが、皆さんにできることではないかと思います。学生に対してこれからも直接語りかえることができればと存じます。

渡部氏:

 岡田外務大臣の父の会社の利益の1%を、日本の外交における友好行為に使いたいという素晴らしい活動が行われています。

松本氏:

 「日中がこの10年で衝突しうる問題は」という質問について、一番大きなのは歴史認識の問題だと思います。日本の学生は、第2次世界大戦は中国との戦争というよりは、アメリカとの戦争という認識が強いわけです。よって、日米同盟を強化しなければならないと言われています。
 私は民主党の新人議員に対し、日本の近代史について、どこで失敗し、しかもなぜ忘れてしまうのかということについて教えることになっています。しかし議員が140人となると、これをまた新しく教育しないといけない。すると日本全体の歴史認識もだいぶ変わるのではないかと。これは私の責務だと思っています。

趙氏:

 時代は、中国と日本のこのような客観的歴史化を求めています。歴史は歴史であって、憎しみではない。歴史を憎しみと記憶してはいけないと思います。私はこのようなことを中国の学生に対して講演しています。

呉氏:

 若い人々の相互交流が一番大事だと思います。アジア、日本をもっと知るべきです。小中高生はみな日本の良いところを見ていると、学校の先生は言っておりました。今後10年の問題に対して、我々は世界を正しく見なければいけません。アジアの復興というのは全人類にとって大きな貢献であり、それには日中の友好が不可欠です。

陳氏:

 包括的な視点を持つことが大事です。いま中国はトップランナーかもしれませんが、我々はともに前進できる余地があります。

 

 

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