. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 全体会議(最終日)

120703 01 7月3日午前9時より「第8回 東京-北京フォーラム」の全体会議が行われました。前半では、日本側から加藤紘一氏(日中友好協会会長、元内閣官房長官)、山田啓二氏(全国知事会会長、京都府知事)、中国側から葉小文氏(中央社会主文学院党組織書記)、陳昊蘇氏(中国人民対外友好協会会長)が、それぞれ基調講演を行いました。

 

 

120703 kato 加藤紘一氏は、日本人が持つ反中国心で大きいものとして、まずGDPで抜かれてしまった点と、それに追い打ちをかけるように尖閣諸島の問題が発生した点を指摘。その上で「1人あたりのGDPで抜いた、抜いていないという話をしても仕方がない」とし、「中国は中国、日本は日本」とそれぞれの文化と伝統を誇ることが大事だと主張しました。最後に、日本が明治維新の際に福沢諭吉が提唱した、「脱亜入欧」に代わる新しい言葉が必要だとも主張しました。

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 葉小文氏は、石油など大量のエネルギー需要に応えるために軍事力を行使し土地を奪ってきたのがかつての戦争であったが、「中国は今後の発展を内需の拡大によって成し遂げていく」とし、今後も中国は平和的に成長していくと主張。しかし、「どの国にも誤解を大げさにし、恨みを煽り立てて関係を悪化させる過激主義者がおり、これには警戒しなければならない」と指摘。それを防止することで、各国と平和的に発展できるとしました。


120703 yamada 山田氏は、統計データを用いて、国家間の交流は進んでいるが、それ以上に地方自治体としての中国との交流の量と質は比べ物にならないほど進んでいると主張。しかし、「交流が進めば進むほど、当然、軋轢や問題も起こるが、それは交流が進んでいる証なのです。それをどうプラスに変えていくのかというカギを地方が持っている」とし、具体的には防災・高齢化介護などのノウハウを共有・共感し、次の10年間の日中の大きな土台とつくっていけると締めくくりました。

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 陳昊蘇氏は、自身が中日交流を推進してきた立場から、「意見の相違があることは当然であり、交流の場で議論することには非常に意義がある」と本フォーラムの意義を改めて指摘し、さらに「両国人が相手国に関して意見交換ができる友人をつくれれば、両国関係の改善にプラスになる」とし、さらに「中日の若者交流を変えて、さらに若者が興味を持つ形で交流できる形を提案したい」と中日相互理解ができる若者を育てることに貢献したいと主張しました。

 その後、コーヒーブレイクに入り、2日の分科会参加者が、分科会で何が議論されたのかを語るパネルディスカッションに移りました。

 


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 7月3日(火)の全体会議では、基調講演に続き、前日に行われた5分科会のパネリストによる分科会報告が行われました。

 

 

120702 s matsumoto まず、分科会「政治対話」の日本側司会を務めた松本健一氏は、尖閣諸島の問題に関しては、「すぐに決着をつけようとすると、ナショナリズムの衝突になってしまう」と警告した上で、「それでもこの問題を話し合うような場をつくる必要がある」とし、「ワーキンググループをつくって、その問題を話し合う手立てを考えてはどうかという話になった」と報告しました。同じく政治対話の中国側司会を務めた王帆氏は、「大同小異で、自省的な態度をとって、両国間の共通の認識をもつことで、極端なナショナリズムに対処しなければならない」と補足しました。


120702 k kojima 続いて、分科会「経済対話」の日本側司会を務めた小島明氏は、世論調査によると、お互いの国の印象は悪くなっているが、「相手国の発展は自国にとってもプラスであるとしている意見が出ている」ことを取り上げ、実際のところ「欧州危機はアジアにも影響を及ぼし始めているため、日本と中国が協力して、アジアのための金融資本市場の仕組みや、アジアの広域なインフラづくり」が求められると主張しました。中国側司会を務めた遅福林氏は、日中間FTA、人民元取引など、議論が多岐にわたったことなどを報告しました。

 

120703 kato 次に、分科会「メディア対話」の日本側司会を担当した加藤氏は、「日本の中国に対する印象が最悪になっているが、お互い知るツールとしてメディアを使っており、メディアの責任が大きいのではないか」と疑問を提起し、「そもそもメディアに携わる者同士が相互理解できていない可能性があり、編集者・記者の交流を増やすべき」と1つの解決策を提示しました。続いて中国側司会を担当した程曼麗氏は、分科会にて工藤氏から、「軍国主義が8年にわたって日本のイメージで高い比率になっているのが疑問である」とあったのに対して、「歴史的背景があるからそうなっている」と説明したことなどを報告しました。



120702 p miyamoto 更に、分科会「安全保障対話」の日本側司会と担当した宮本氏は、自衛のための軍備増強をしているのが他国には脅威に映り、そのため他国も軍備増強を進め、そうやって戦争が起こってしまう「安全保障のジレンマ」を取り上げ、これが東アジアにも起こる可能性があると警告。これを回避する方法として、「徹底的に対話をし相互理解を進めること」とした。さらに、尖閣列島に関しては「喧々諤々の議論になった」と議論の白熱さを伝え、「早急に結論を出すことは難しいが、尖閣問題ゆえに戦争になってはならないと明確なコンセンサスがあった」とした。そして、「それでは、早急に解決できない問題をどうするか。真剣に話し合う場が必要である。」として、早急に危機管理のメカニズムを作り上げる必要があることを主張しました。呉建民氏は、「対話の方が対抗より有効である。外交的解決の方が軍事的解決より有効である。緩和ムードの方が緊迫ムードより良い。」という分科会における、3点の意見の合意を取り上げ、相互理解のための話し合いの場の重要性を強調しました。


120702 c yamada 最後に、分科会「地域対話」に出席した山田氏は、地域対話では、原子力発電所の事故問題、防災関係の知識の共有など具体的な内容が話し合われ、「さらに一歩話を進めて新しいプラットフォームをつくり知識共有する場をつくってはどうか」と報告しました。中国側司会担当の袁岳氏は、民間・青少年の交流をとりあげ、「真面目な活動ばかりでなく、例えばアニメなど若者達が好むやり方で進める方がより効果的になるのではないか」と若者の文化交流をより活性化させ、人的交流を進める重要性を強調しました。


 

 その後、今回の議論をもとに、民間による日中関係発展への提案である「東京コンセンサス」を発表し、2日間にわたる「第8回 東京-北京フォーラム」は閉幕いたしました。

 

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