. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 全体会議(最終日)

27日全体会議 「東アジアの平和・発展と日中両国の責任―日中平和友好条約の意義を再確認する」をメインテーマに26日から行われていた「第9回 東京-北京フォーラム」は27日に最終日を迎えました。最終日は講演と分科会報告からなる全体会議を行い、「日中両国は戦争に道を開く、どんな行動も選んではいけない」、「尖閣諸島を巡る対立に対処するために、両国政府は話し合いを開始することが急務である」とする不戦の誓いである「北京コンセンサス」を提唱して閉幕しました。

福田康夫氏(元内閣総理大臣) 全体会議の冒頭では、福田康夫氏(元内閣総理大臣)の特別講演が行われました。同氏は、松下電器(現パナソニック)創業者の故・松下幸之助氏などかつての日本の経営者は、自社の利益だけを追求していくのではなく、純粋に社会に貢献していく姿勢を持っていたことを紹介し、「この姿勢は国家を運営していく上でも必要なことである」と語りました。さらに、今後の日本外交のあり方について、歴史認識問題への真摯な取り組みや、世界に貢献していくための最低限の軍事力整備などの基盤を整えた上で、「世界の多極化を意識して、アメリカだけと関係を深めるのではなく、中国、韓国、ロシアなど近隣諸国と多角的に協調していくべき」と述べ、「そうしないと21世紀の日本の平和と繁栄は不可能」と断じました。また、これまで日本と中国の間で交わされた日中平和友好条約など4つの重要な政治文書で示された原則・精神は、日中関係のみならず「東アジアの安定や国際社会に貢献していくためにも不可欠」であるとし、「やる気さえ出せば、世界における様々な課題を解決していくことができる」と中国側に協調を呼びかけました。

魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長) 続いて、基調講演に移り魏建国氏(中国国際経済交流センター副理事長)は、本来、一衣帯水であるはずの中日両国は、歴史認識問題、尖閣諸島問題によって「不愉快な状況にある」と述べ、「その責任は日本の政治指導者にある」と日本側を強く牽制しました。一方で、「だからといって両国関係が冷え込んでいるとは思わない」との認識を示し、「この『東京-北京フォーラム』の参加者をはじめとして、両国の多くの国民が関係改善を目指して地道な努力を積み重ねている」と述べました。最後に、今後の日中関係改善の方向性として、「経済界が率先してこの困難な局面を打開すべき」とし、そこから国民感情の修復、さらには政府間関係の回復につなげていくべきだ、と主張しました。

武藤敏郎氏(大和総研理事長、元日本銀行副総裁) 武藤敏郎氏(大和総研理事長、元日本銀行副総裁)は、日中間の経済関係が、昨秋の日本政府による尖閣問題国有化以降、「貿易、直接投資、観光などいろいろな面で減少ないし停滞している」と現状を説明。GDP世界2、3位の経済大国である日中の経済関係の悪化は、両国の国民生活だけでなく、アジアや世界の経済に対して重大な影響を及ぼすと指摘しました。また、「経済合理性によって育まれてきた日中の経済関係は、現在の日中間の問題を冷静に考える糸口になる」と述べ、日中間の経済関係を再構築していくことは日中関係の大局的な改善にもつながっていくという認識を示しました。さらに、日中平和友好条約第3条「両国の経済関係の一層の発展」に触れ、「この原点に立ち返り、両国関係の正常化と経済関係の発展に努力していくべきである」と主張しました。

呉建民氏(国家改革発展戦略研究会常務副会長) 呉建民氏(国家改革発展戦略研究会常務副会長)は、「中日関係の将来には明確なビジョンがあるので、将来を悲観する理由はない」と述べました。その根拠として、福田氏も言及した日本と中国の間の4つの政治文書は、「両国が問題に直面した時に、それを打開するための指針になっている」とし、これらを拠りどころとすることで、関係改善は可能であるとの認識を示しました。さらに、東アジアは世界の経済の中心になったため、日中間で協力関係を構築できる局面が増えてくることや、「戦争と革命」の世紀は過ぎ去り、「平和と発展」が世界におけるトレンドとして定着していることも、両国が関係改善していくための好条件になっていると述べ、「将来を悲観せずに、両国でともに美しい未来を描いていきましょう」と日本側に呼びかけました。


小倉和夫氏(国際交流基金顧問) 最後に基調講演に臨んだ、小倉和夫氏(国際交流基金顧問)は、まず、「周辺諸国は中国に軍事的な脅威を感じているが、これまで帝国主義の犠牲になってきた歴史を考えると、中国は安全保障に敏感にならざるを得ないのではないか」との認識を示しました。それを踏まえた上で、「中国を安心させる必要がある」と話し、「日中平和友好条約の精神を、日中間のみならずアジア全体で共有すること」が必要であると主張しました。また、「世界に対して大きなインパクトを与えているアジアは、世界に対して大きな責任を負っている」とし、この「東京-北京フォーラム」も日中間だけで対話するのではなく、日中が共に並び、未来についての青写真を共有し、アジアから世界に向かい合って発信していくという構図にしていく必要がある、と今後のフォーラムのあり方について具体的な提言をしました。

親カテゴリ: 2013年 第9回
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