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明石副実行委員長インタビュー

 

明石副実行委員長インタビュー明石康 NPO法人日本紛争予防センター会長

1954年東京大学教養学部卒業、同大学院を経てバージニア大学大学院修了。’57年日本人として初めて国連入り後、事務次長、カンボジア暫定統治機構・旧ユーゴスラビアの事務総長特別代表を歴任。1999年より現職。スリランカ平和構築担当日本政府代表などを務める。著書に『国際連合 軌跡と展望』(岩波書店)『戦争と平和の谷間で―国境を超えた群像』(岩波書店)など。


Q :9月に第4回東京-北京フォーラムが開催されますが、民間対話の役割というものをどうお考えでしょうか。

 ここ一年余り、特に福田政権が日本で誕生して以降、歴史の問題や靖国神社の問題が両国の緊張を煽るような争点ではなくなってきているのは大変嬉しいことだと思います。しかしながら我々は手をあげて安心してしまうのではなくて、やはり両国の間に介在しているナショナリズムに注意する必要があると思います。今回の北京オリンピックを見ても、中国側が持つ新しい中国に対する誇り、これが正当な誇りから、もしかしたら驕りに変わるかもしれない懸念があります。また日本側も、まだアメリカに次ぐ世界第二の経済大国ではあるけれども、成長のスピードは落ち、少子高齢化社会になりつつある。そのことから来る焦りと、ますます発展しつつある中国に対する羨望、ジェラシー、そういったものが内向してゆく危険もあると思います。ですから、お互いにそうしたものに対する強い自制心と合理的な精神を持ってやっていくことが大切です。その意味で、民間の対話、民間外交というものはとても大事になってきています。お互いの違うところと、またいくつかの似ている点を意識した上で、互いに相手を見るときに、その視点が歪んでいないかと、率直な対話によって確かめていくことが出来ればすばらしいと思います。

 今回のフォーラムでは、日本と中国両方の側でのナショナリズムの行方のほかに、両国の世論というもの、マスコミの在り方などについても、いろいろ率直な議論が出来ればと思います。それから、世界的なレベルで「国家主権」の役割というのがずいぶん変わってきているのですが、アジアにおいては、中国の場合もインドの場合もそうですけれども、植民地主義を経験しているために、新しい帝国主義への警戒といいますか、例えば「保護する責任」とか「人道的介入」といった超国家的な価値の挑戦への警戒心がとても強いと思います。そうした在来の国家主権を、より重要な新しい価値によって制約する、という世界的な動きに対してアジアはどのように対処すべきかも話しあうべきではないかと思います。つまり、日中関係を二国関係として見るだけではなく、アジアにおける地域協力をどういう風に進めていけばいいか、例えば北東アジアにおける六カ国の体制を将来北東アジアにおけるサブ地域的な協力の枠組みとして成長させていく可能性などについても話すことが出来ればと思います。  

 中国側に聞いてみたいのは、今までお互いに経済中心でやってきたけれども、これからはおそらく政治中心の発展というものが考えられる中において、中国の国内における格差が顕在化してきたとき、中国はどのようにそれを解決しようとしているのか。加えて、チベットや新疆などいろいろな民族を沢山抱えている国として、そうした多民族社会が民主化のプロセスを進んでいくとすれば、それをどういう風に進めていくであろうかということです。また、私は国連経験が長いので、出来れば国連という枠内での日中の役割、例えば平和維持(PKO)についての協力、ポストコンフリクトの平和構築での協力、それから災害の防止や紛争の解決・予防などについても、日中がどういうことを行っていけるか。他にも、地球環境の問題、エイズやSARSといった新しい感染症に対する対策、国際犯罪やテロリズムに対する対策、さらにきわめて大事なのが核軍縮と核の不拡散の問題…こうしたグローバルな問題についてもお互いにどう協力するかを議論したいと思います。現代は国レベルで解決できる問題と国際的に協力しないと解決できない問題があり、後者の問題がこれからますます増えていくと思いますので、そういうお互いの重要な国際的な役割について忌憚無い話をすることができれば有意義だろうと思います。


Q :ありがとうございました。最後に、このサイトをご覧の皆さんに、メッセージをお願いします。

 今度開かれる「東京 - 北京フォーラム」では、平和の問題や核兵器の問題など、日中が一連のグローバルな問題にどういう風に対処していけばいいか、お互いに国連をどういう風に使えばいいかとかですね、そういうそれぞれの国としても扱わなくてはいけない問題について両国がどういう風に協力できるかについても率直に話し合うことになると思いますので、ぜひとも沢山の市民の方々に参加していただけると大変嬉しいことだと思っております。

親カテゴリ: 2008年 第4回
カテゴリ: 発言録