. 言論NPO主催「東京-北京フォーラム」公式サイト - 全体会議(分科会報告)

 11月3日、「第5回 北京-東京フォーラムin大連」の締めくくりとなる3日目の全体会議が開催されました。全体会議の後半では、前日に行われた各分科会のパネリストらが、各分科会での議論の内容を報告しました。

GM1 はじめに、中国側から政治対話と安全保障対話の報告がなされました。政治対話の報告を行った楊伯江氏(中国現代国際問題研究院日本研究所所長)は「東アジア共同体の構築、日本の経済発展の中国に対する意義など理論的にほりさげた議論ができた」と報告しました。そして、大連理工大学での政治対話について、「日本と中国、学生と政治家、若者と年配者の間で相互にインタラクティブな議論ができ、成功だった」と述べました。
「安全保障対話」について李秀石氏(上海国際問題研究所日本研究室主任)は「マクロ戦略的な観点から実りの多い議論だった」と評価しました。具体的には、「核問題で核不拡散や核の先制不使用などの点で中国と民主党が一致したこと、日米中の三カ国関係についての議論ができたことなどが成果だった」と語りました。そして、「中国は、民主党が自民党時代の安全保障上の問題について、今後どう処理していくかにも関心を持っている」とし、「民主党藤田代議士から民主党の立場について説明があった」と報告しました。
 「政治対話」では、日本側からは松本健一氏(麗澤大学教授)が「第2回 北京‐東京フォーラム」から議論が始まっていた東アジア共同体が、今回大きなテーマとして取り上げられたことについて、「鳩山政権の構想が大きなインパクトを与えた」とし、「このフォーラムでの議論が政治過程で実現してきたことのあらわれではないか」と述べました。そして、東アジア共同体は、近代日本が一貫して目指してきた『脱亜入欧』から、アジアへ復帰したことを意味する。」とし、共同体は「東アジアの共通の問題を共同で調整する場となるべきだ」と述べました。さらに、鳩山政権が日米同盟重視に加えアジア重視の姿勢を明確に打ち出したことを踏まえつつ、アジアの普遍的理念として「共生」という概念を提起しました。
 若宮啓文氏(朝日新聞社コラムニスト)は「安全保障対話」について、自身の印象と若干の補足を述べました。若宮氏は「これまで議論の集中していた日本の歴史問題と中国の透明性については双方からあらかじめ先に主張が提示された」と述べました。今回主要なテーマとなった東アジア共同体については「規模・主体が漠然としているので、中国も戸惑っている」との印象を語りました。また尖閣諸島やガス田の問題については意見の相違・対立があったものの、全般的には前向きに協力するという方向性で一致したと総括しました。

 続いて中国側から経済・メディア・地方の分科会報告がなされました。
 周牧之氏(東京経済大学教授)は「経済対話」について、ドル基軸通貨体制や人民元切り上げといった世界の通貨体制に関する考え方については、日中のパネリストの間に意見の対立が存在したことなどを指摘しました。また、それに関連して「アジアにおいては、強い円と元の両立を目指すべきではないか」とも提案しました。
 「メディア対話」は胡俊凱氏(『瞭眺』周刊社副総編集長、『環球』雑誌社執行総編集長)が分科会を総括しました。胡氏は昨年のメディア対話がミクロ的な話題に終始したのに対して、今回はよりマクロな観点からメディアの責任について議論が行われたことを指摘しました。そして今回のフォーラムでは「相互理解の深化から相互信頼の深化へ議論がステップアップした」と述べました。また日中共同世論調査についても触れ、「異なる立場や文化的背景が存在しているため、相手国を知る主要な情報源としてメディアが責任を持つ」ことが必要との認識を示しました。
 「地方対話」での議論を報告した唐聞生氏(宋慶齢基金会副主席)も、他の分科会同様に「(昨年のフォーラムに比較して)より掘り下げた議論ができた」と述べたうえで、具体的な議論の内容として、都市の発展・管理、都市の空洞化等を挙げました。そして「理論レベルにとどまらず具体的な交流が必要との声もあった」と締めくくりました。

GM2 その後、日本側のパネリストによる経済・メディア・地方対話の分科会報告が行われました。
 「経済対話」で日本側の司会を務めた小島明氏(日本経済研究センター特別顧問)は、今回の経済危機について「一時的ではなく構造的な問題である」としたうえで、「経済成長モデルの再構築が求められている」と述べました。さらに、世界第2,3位の経済大国である日本と中国が、世界経済におけるその役割と責任について共通の認識で一致したことを明らかにしました。
 「メディア対話」報告者の木村伊量氏(朝日新聞社ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長)は、日中共同世論調査の結果を踏まえて日本のイメージについての討論があったことを説明した後、松本盛雄氏(在瀋陽日本国総領事)からアンケート結果と自らの実感に相違があるという指摘があったことも明らかにしました。また、「これまで『権力からの自由』が問題とされてきた中国メディアも、近年は『資本からの自由』も問題となってきている」と述べることで、中国メディアの変化を強調しました。
 「地方対話」からは山田啓二氏(京都府知事)が登壇しました。山田氏は「地方は現実的・具体的に交流が行われているためもっとも成果を出しやすいし、また出すことができる」と語りました。そのうえで、問題を絞り、日本の知識と中国の活力を活用するかたちで協力を行うことの重要性を指摘しました。また「日中の交流は地域・地方からもたらされるべきであり、それこそが東アジア共同体形成の鍵となる」とも述べました。


 最後に、司会を務めた国分良成氏(慶應義塾大学法学部長)、馬為公氏(中国国際放送局副総編集長)がそれぞれ総括の発言をしました。
まず国分氏は、今年で5回を数える本フォーラムについて、議論を財産として蓄積していくことの重要性を指摘しました。また今回の議論の大きなテーマとなった「東アジア共同体」構想についても触れ、「日中ともにコンセンサスがとれているわけではない」と注意を喚起しました。そのうえで国分氏は大きく3点の注意点を示しました。ひとつは、中国の台頭と日本のアジアへのシフトを背景とした「グローバルな価値と地域的価値をいかに融合させるか」という問題、ふたつ目は「日中だけでアジア共同体をつくるわけではな」く、その意味で他国とのバランスをとる必要性がある点、そして最後に「金融危機下で内向きになりがちであるなか、国内問題と国際問題をいかにバランシングするか」という点を指摘しました。また、馬氏は、今回のフォーラム全体について「哲学的でグローバルな視点から議論がなされた」と評価したうえで、主催者である中国日報社や言論NPO、大連市やパネリスト、参加者などに感謝の意を表しました。

GM3 その後、日中主催者を代表し、言論NPO代表の工藤泰志が「大連宣言」を発表しました。そこでは、「北京‐東京フォーラム」は当面10回開催予定であるが、次の5回において「東アジアの未来やそのための課題解決に向けたよりレベルの高い具体的な対話の方向に発展していくべき、との認識で一致した」とされました。そして最後に、「『北京‐東京フォーラム』が日中両国における官民一体の優れた交流と協力の枠組みとプラットフォームになれるよう、さらに努力していく」という言葉で締めくくりました。

 「大連宣言」の発表後に、高岸明氏(中国日報社事務総長)が各関係者に対し改めて謝意を表明したうえで、「中国日報社は言論NPOと協力して、引き続き中日戦略的互恵関係の発展に寄与していく」と述べ、「第5回 北京‐東京フォーラムin大連」を締めくくりました。

カテゴリ: 2009年 第5回